第1章【森下姫奈と王子様】

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こういう疑問が浮かんだ時に、うってつけの友人がいる。 モールで働く従業員のイケメン情報を集めるのが得意……と言うより、もはや趣味くらいの友人が。 帰りに彼女に聞いてみようと考えながら、呼ばれている事務局へと急いだ。 「失礼します」 事務局をノックして入ると、事務局係長の堀(ホリ)さんが私に気が付き、前へと出てきた。 「森下店長、お忙しいのに申し訳ないです」 「いえ、折り込み広告の件ですよね?」 「はい。あ、こちらへどうぞ」 案内された先は応接室。 何年も働いているけれど、応接室へ入るのは初めてで少し緊張してしまう。 ふかふかのソファーにお茶まで出されて、何だか特別扱いされている気分。 「このチラシなんですけど……」 原稿を持って堀さんが応接室に入ってきた。 スーツをサラリと着こなして、短い前髪をツンと上に立たせているのが、爽やかな好青年に見せている。
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