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「ケーキも食べたしそろそろ帰る?」
「ほとんど姫が食べたんだけどな」
「……すいません」
「ま、俺様は心が広いから許してやるけど」
「はいはい」
何だその態度は、と王子が後ろで怒っているけれど、本気で怒っている訳じゃないのが分かるから、私は歩みを止めなかった。
今日は私の30回目の誕生日。
ハプニングは色々あったけれど、何より王子のことが少し知れて良かったと思った。
私は王子をアパートに送り届けたあと、部屋でコーヒーを淹れてのんびり過ごす。
「……やっぱり王子が淹れるのと全然違う」
コーヒーはいつもの味に戻ってしまったけれど、スマホの画面を見て幸せな気持ちは思い出された。
待受画面に設定したのは“誕・生・お・め・で・と・う”のプチケーキ写真。
「ありがとね、王子」
私はスマホの画面に向かって届かない感謝の気持ちを口にした――。
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