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「あら、ごめんなさい。私が1番遅かったみたいね」
そこへ1人の高齢女性がやって来た。化粧をし、髪もきちんと整え、綺麗な服を着ている。彼女が純達の元担任、柴田秀子だ。今年で75歳だと聞いていたが、彼女は実年齢よりも若く見える。近くまでタクシーで来て、そこから徒歩で来たようだ。来るまでに身体が疲れてしまったらしく、膝を摩っている。
「お久しぶりです」
「川藤君ね? それから、真壁君」
「よ、よくわかりましたね」
「私は今でもあなた達の先生よ。目を見れば、誰だかすぐにわかるわ」
秀子は1度他人の顔を見ればすぐに記憶してしまう。生徒達の名も始業式の際に全て記憶し、翌日からは出席簿の名前を見ること無く生徒全員の名を言い当てた。彼女は言う。「自分の子供の名前を覚えられない親なんていない」と。そう、秀子にとって生徒は家族も同然なのだ。自分の息子、娘なのだ。卒業後も自分達のことをしっかりと覚えていてくれた。そのことに純達は感激した。
「何だ、溝口のヤツ遅いなぁ」
「そうだなぁ。……まぁそのうち来るだろ、アイツも楽しみにしてたし。先に行こうぜ」
と英太。他の面々も彼に賛成だった。
彼等は学校のすぐ隣にある花壇へと向かった。
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