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悲鳴だ。女性の悲鳴。それもきっと、友人の。作業をやめて声のした方へと走り出すクラスメイト達。場所は松の木が生えている地点。何本も生えた大きな木の下で、志織が尻餅をつき、口を抑えて震えているのが見えた。
「何だ? どうした?」
「アレ……アレ」
「アレって?」
と裕也が確認すると、彼も小さく悲鳴を上げ、その場から後退った。英太も同じように近づいて確認し、その後ゆっくりと後退した。純達もソレを確認して言葉を失った。柵の外にある街灯が、ソレの一部を照らしている。毛が生えた箇所があるが、一部が何かで濡れている。
走ることが出来ず、秀子が遅れて純達の方にやって来た。必死に足を動かしたらしく、立ち止まると手で太腿を摩った。息も若干切れている。
「どうしたの? な、何があったの?」
「先生、警察呼ばないと」
「え? 警察?」
「溝口が、溝口が死んでる」
街灯に照らされていたのは、草木の奥で、壁に寄りかかるようにして倒れている溝口利光の遺体だった。
まさかこんな形で驚かされることになるとは。いつもは笑いが起きる筈の溝口のドッキリ。今回ばかりは、誰1人として笑うことは出来なかった。
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