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桜咲く4月の鹿深台高校の朝。
校門は登校してきた生徒たちでごった返している。
新たに新1年生も加わり活気に溢れる校門には、クラブ活動の勧誘がピークに差し掛かっていた。
「……退屈だ」
クラブの勧誘を鬱陶しそうに払い除けながら昇降口へ向かうこの少年。
名を三島九郎という。
新入生にもかかわらず、制服をだらしなく着崩して、丸で足を引きずるように登校してきた。
新たなスクールライフに夢と希望を抱きつつ登校している他の1年生とは違い、彼は憂鬱だった。
「なんだっつーんだ。
俺ぁてっきり高校生になりゃあ、もっと刺激のある毎日を送れると思ってたってぇのによぉ。
『この学校で一番ケンカ強ぇ奴を呼んでこい』っつって出てきた奴は30秒ノックダウンだったし、空手部、ボクシング部、柔道部の主将も1分と持ちゃあしねぇ。
これだったら、まだ中学ン頃のがよっぽどスリルがあって楽しかったなぁ……」
九郎はため息をつき、キョロキョロと辺りを見回した。
何人かの生徒が彼の存在に気付くが、やはり誰も彼と目を合わせようとしない。
既に九郎のケンカの噂は校内に広がっていたのだ。
「かと言って、部活ってのもなぁ……」
九郎はたまたま一際熱心に勧誘をする野球部の方を見た。
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