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麻衣からの連絡があって以降、和樹は頻繁に亮へ連絡を試みた。
不在を伝える丁寧な機械音声もすっかり聞き慣れてしまった。
まだ麻衣から連絡が来てから2日しか経っていないが、
ずっと携帯の電源が切られていることは不自然に思えた。
何か変な事件に巻き込まれていなければいいけど。
和樹はネットゲームにログインし、
チームメイトと音声チャットをできるように設定した。
ヘッドフォンを装着し、挨拶をする。
参加するメンバーが集まり、
ゲームを開始しようとしたとき、
チームメイトの一人――ユウコが言った。
「ねえ、そういえばさ」
ユウコはこのFPS内では珍しい女性プレイヤーである。
専業主婦であるため
オフ会の参加や頻繁にログインはできないが、
ゲーム技術としはかなり上級者で
オフラインの大会で優勝したチームに所属していた経験者だ。
「ズッキーニさんの住んでる地域で死体が見つかったんでしょ?」
ズッキーニとは和樹のハンドルネームだ。
ゲームを始めた頃、和樹はネットのハンドルネームを『カズッキーニ』と設定していたが、
いつの間にか、一文字抜けた状態で周囲から呼ばれるようになっていた。
「え?なにそれ」
他のプレイヤーも死体遺棄の件を知っているようだったが、
和樹だけ知らなかった。
「知らないんですか?ニュースで取り上げられてますよ」
ユウコは続けた。
「指紋や歯形とか身分が解るようなものがめちゃくちゃにされた死体が見つかったらしいですよ」
「ちょっとニュース見てくる」
「今ですか?メンバー1人空いちゃいますよ」
メンバーの一人――マイドが言った。
彼は社会人3年目のサラリーマンらしい。
チームの中では、一番ゲーム歴が浅く
まだまだ強いとは言えないが、
判断力が優れているため、よく援護をしてくれる。
今から行うゲームはチーム制で
1チーム6人で相手のチームと戦う。
「お疲れっす。じゃあ、俺が入ります」
いまログインしてきたばかりのチームメイト――アルファーが名乗り出た。
彼も和樹と同じように
ゲーム内での有名プレイヤーの一人だ。
「先に1ゲーム始めちゃいますよ?」
「いいよ、終わったら声かけて」
チームメイト達が先にゲームを始めたのを確認してから
和樹は新たにブラウザを起動し
大手インターネット会社のトップページを見た。
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