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本来なら大介自身も
別の仕事を探すべきだったかもしれないが、
大介を桜ヶ丘学院に紹介してくれた恩師が出世し、
教頭になってしまったため
辞めるタイミングを見逃してしまった。
恩師は、古株の一人であるが
他の古株教師と違い、
積極的に若い衆の意見を取り入れようと
様々な試行錯誤を繰り返している人だった。
当然のことながら、彼を煙たがる古株は多い。
大人げない嫌みや嫌がらせを続けている者までいることを大介は知っている。
そんな状況にもかかわらず
恩師がいちばん気にかけていた新人こそ大介であり、
学生時代とは違った信頼が芽生えていた。
桜ヶ丘学院に勤務してからも
何度も公立高校の教員採用試験に落ちる大介を
フォローしてくれるのも恩師だ。
しかし、
正直なところ、大介は教員採用試験に対して
真面目に勉強をしたことなどなかった。
合格をして公立高校に勤務ができれば
公務員として世間からも一目置かれるが、
既に社会人となり、
仕事をしながら試験に向けて勉強することは
大学生の頃と違い、時間も体力も足りない。
おそらく、
受験してきた成績は大学在学時が最も好成績だったとして
どんどん悪くなっているはずだ。
もともと勉強が苦手な大介にとって
生徒に教える内容の予習の他に
さらに勉強をするなんて
到底、無理な話だった。
エスカレーターで進学した大学、
何となく希望した文学部、
単位のために取った授業、
流れで入手した教職の資格。
資格さえ手に入れれば、
就職も将来も安泰だと、気安く考えていたことで
今の大介が存在している。
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