プロローグ

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それから……10年後。 イギリス・ロンドン。 ヒュルッツバーグ駅前。 「号外だよ!!号外!!」 「また昨日起きたよ!!例の聖職者殺し!!」 新聞屋の青年が、束になっている朝刊を次から次へと通行人に渡しては…… 声高らかに叫び宣伝する。 最近、ここロンドンでは……連続聖職者殺し殺人事件が世間を騒がせていた。 「まぁ……また聖職者殺しが……」 そこへ、小柄な一人のシスターが近付いて来て青ざめながら呟く。 金色の長い髪をみつあみにし、くりくりした大きな蒼い瞳。 彼女の名は、レナ・クオリプス(18)。 近くの教会に住むシスターだ。 「おはよう、シスターレナ」 「しかし、世も末だぜ」 「神に仕える敬虔なクリスチャン様が相次いで殺されるなんてさ!」 新聞屋の青年が苦笑いすると、レナにも朝刊を渡した。 「確かに……そうですわよね」 「私も神に仕える身なので怖いですわ……」 レナも肩を軽く震わせ青ざめながら、新聞屋の青年にこたえた。 「だよな~」 新聞屋の青年も納得して頷く。 「それでは……私はそろそろ教会に戻りますわ」 「おう、また明日な!」 レナはペコッと頭を下げ、新聞屋の青年が手を振り駅前で別れた。 新聞屋の青年に背を向けた塗炭、レナは薄く笑みを浮かべる。 レナ・クオリプスと言う名は偽名で、彼女は女ではない。 本名は、レイス・オルフィード。 ある目的で、名を変え、姿を変えているのだ。
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