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ロンドン中心街にある一際豪華絢爛な教会。
聖・フランチェス大聖堂。
敬虔なクリスチャンであり、大聖堂の最高責任者、司祭ルガー・フルイド(53)は……
クリスチャンである人々から支持を受け、子供たちからも好かれていた。
「司祭様、貴方様の祈りのお陰で、主人も病を治す事が出来ました」
「いやいや、私はただ神に祈りを捧げただけですよ」
「病を治したのは……貴女のご主人が熱心に神を敬愛していたからです」
「全ては神々の御導き……」
ルガーは、感謝してきた女性に言うと、クルリと背を向けた。
キッ
ヒヒーンッ
大聖堂の前に、一台の貴族の馬車が停まる。
「司祭様、聞きまして?」
「また、近くで富裕層を狙った強盗殺人事件がありましてよ?」
そこへ、いかにも豪華なドレスを着た貴族の女性が馬車から降りてくると、ルガーに走り寄ってきた。
「それはそれは……恐ろしい事件がまた起きてしまうとは……」
ルガーは、一瞬口元を緩め笑みを浮かべた後に悲しげな顔をして、貴族の女性に言う。
「強盗殺人事件には特徴がありまして……」
「不細工な者は直ぐに殺し、綺麗な男や女性には……散々犯した後で残酷に殺すらしいわ」
貴族の女性は、恐い、恐いと震える。
「大丈夫ですよ、きっと神が助けて下さいます」
にこやかに笑ってルガーは貴族の女性に言った。
「そろそろ夕刻です。日が暮れぬうちに帰った方が良いですよ」
ルガーは、貴族の女性と、一般の女性に言うと背を向け大聖堂の中へと入って行く。
「見たか?ミカル」
貴族の女性が、隣にいた一般の女性に尋ねる。
「あぁ、確かに見た。今微かに笑みを浮かべたな」
一般の女性も、貴族の女性に頷いた。
実は、この二人の正体は女装して変装したルシアとミカルだったりする。
パチンッと指を鳴らして、ルシアは馬車を一瞬で消す。
先程の馬車も、ルシアが魔法で作り出した物なのだ。
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