想定外の恋心

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…あの人に惹かれていると自覚したあの日から、数週間が経った。 だけどあの日から、私と彼が2人で会うことはなくて。 もちろんあのバーには、何度か仕事帰りに立ち寄ってみた。 …でも、偶然彼に会うことはなかった。 電話して、今日飲みに行きませんかって、誘えばこんなモヤモヤしなくていいんだろうけど。 ……言えない。 今までの私なら、この人いいかもと思った人には積極的に近付いていた。 そして自分から近付いて、告白は相手の方からさせる。 ……それが、今までの私のパターン。 …だけど今回ばかりは。 …今まで通りが通用しそうにない。 今までそのパターンが通用したのは、相手も私に好意がある事がわかっていたから。 自分に好意を持ってない人にわざわざ近付いたって、時間の無駄のような気さえしていた。 ……ていうか、電話番号教えたんだから、男の方からかけてくるのがマナーだと思うんだけど。 例えそれが、いくら気のない女だとしても。 「雪ちゃん、お待たせ~。休憩どうぞ」 「……行ってきます」 先にお昼休憩に行っていた絵麻が戻ってきて、入れ替わりで次は私が休憩に入る。 …何となく今日は社員食堂に行く気がしなくて、バッグを持って外に出た。
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