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「君もよく人を見て、相手を選んだ方がいい。誰カレ構わずに良い顔していたら、その内後ろから刺されますよ」
冷たい言葉で、ザックリと注意をしてきた。
後ろから刺されるって、何で刺されなきゃならないのよ? 私、悪いコトしてるつもりないのに。
ちょっと憤慨しながら睨むようにその人を見たら、視線を絡ませるように私の顔を見る。少しだけ困ったような、それでいて、やれやれといった優しい眼差しに思わずドキッとしてしまい。
――なっ、何だろ今の……?
自分の鼓動に、困惑して俯くと――
「彼女も反省してるようだし、諦めて帰りなさい。営業二課の外川 猛彦くん」
「なっ、何で俺の名前……」
「社内の男性の名前は、ほぼ把握していますよ。特に、優秀な社員はね」
ほぼ覚えてるって、どんだけ――!?
フルネームで呼ばれた男はそれだけで満足したのか、私の顔をチラッと見てから、その場を後にした。
「あの、有り難うございます……」
とりあえず助けてもらったんだから、お礼を言って一礼する。
「これからは、きちんと気を付けなさい」
そう言って自分の部署に戻ろうとしたその人の腕に、ばっと手を伸ばしてみた。名前を聞きたかったから。ここであったが何とやら!
「あの……っ」
上着の袖口をぎゅっと掴んだら、すっごく驚いたらしく、振り向きながら振り払うように、激しく腕を振る。その反動なのか分からないんだけど、その人の足が机の足に運悪く引っかかり、見事に転びそうになるのを発見!
慌てて手を伸ばしたけど、男性ひとりを支えきれるワケがなく、思い切り一緒に倒れこんでしまったのである。
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