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(――あれ? 倒れたけど痛くない……)
恐る恐る見ると、その人の体の上にしっかり乗っかってる自分。その人は両手をバンザイして、これでもかと顔を赤くしていた。さっきとは別人――
「倒れた弾みで、どこかに触ったりとかはないからっ! 全然、大丈夫だから////」
ワケの分からない、言いワケまでしてるし。
そんな状況を楽しみながら、思い切って訊ねてみた。
「あの、名前教えて下さい」
「訴えるために、名前聞いてるんでしょうか? ホントにどこも、触ってないですよ!」
「触ってないのは分かってます。私が、個人的に知りたいだけなんです」
クスッと笑いながら、その人の胸元に頬を寄せてあげる。
さっきの大人な態度から一変したこの態度、すっごく可愛すぎるよ。
「何か、策略があるんでしょう? オジサンをからかうのは、もうやめなさい」
真っ赤になりながら、注意されても効果ないし。
「からかってないです。興味が沸いたんです」
私を拒否するような視線したのに、今はこんなに狼狽してるアナタに興味津々。
「断り続けて下さいよ今川部長。小悪魔がほくそ笑んでますから」
後方にある、入り口付近から声がした。私達を見下ろしている人物を知っている。
「こんな部署の入り口で何、押し倒されているんですか。誰かに見つかったら会長の耳に入って、どこかに飛ばされますよ」
呆れた声で言うとソイツは私の脇を掴み、ベリベリ剥がしていく。
「何すんのよ、ホモ山田!」
「その呼び方、誤解を招くからやめて……」
山田と言い争いになりかけた時、その人がやっと立ち上がった。呼吸を整えつつ、私達のやり取りを見ながら、
「君達は、知り合いなのかい?」
のほほんとした様子で訊ねてくる。もしかして、興味をもってくれたとか!?
目を輝かせてその人を見つめたら、眉根を寄せた挙句、ふいっと逸らされてしまって。この態度に、どうしていいか分からなくなってしまった。
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