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隣にいる大人しそうな女性が、鎌田さんの袖をぐいぐい引っ張って、しっかりと注意をしてくれる。
「やぁい、彼女に叱らっ、フガッ」
俺は慌てて、蓮の口を右手で塞いだ。これ以上問題発言されたら、本当に困る(涙)
「挨拶が遅れて、大変申し訳ありません。○○物産の今川です」
「山田の上司ですよね、お話はよく伺ってます。今日のご用件は、何でしょうか?」
メガネの奥から目に見えない威圧感があって、自然と緊張してしまう。山田くんと同じ年齢とは思えない――
「話が長くなるので、そこのコーヒーショップに移動しませんか?」
「彼女も一緒でいいですか? この後、用事がありまして」
「大丈夫です。あまり時間がかからないように、配慮しますね……」
鎌田さんの彼女が優しく微笑んできたので、微笑みを返すと蓮が俺の頬をつねった。
「デレデレしないっ、ほらヤツが睨んでるよ」
メガネの奥から、先ほどとは違う何かが出ている。
――ああ、コワい。
「貴方たちは、親子ですか?」
俺たちを見て、鎌田さんはニヤッと笑った。
「そう見えても、仕方ないですね」
俺が言うと、蓮がキレる。
「この人、ワザと親子って言ったんだよ! キィ! いちいち癇にさわるっ」
「鎌田先輩は、おふたりの事が気に入ったみたいです」
このタイミングで、彼女が助け船を出してくれた。
「何を言ってるんだ?」
「だって気に入らない人だったら、いつも無視するじゃないですか。気に入ったから、あんな発言したんですよね」
ニッコリ笑う彼女に、鎌田さんが困った顔をした。
「鎌田さんの彼女、最強だねマット」
やっと蓮の怒りも収まってくれて、ホッとした俺であった。
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