……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 爆死のいいところは、簡単に死ねること。痛みも苦しみもなく、気が付いたらベッドの上。起爆さえできれば一番楽かもね。  厄介なのは、死ぬ前がものすごく怖い事かな。自爆用の「特別」を使ったのは他にも何回かあったけど、その時が一番迷いなく使えたわ。これは間違いなく。死ぬことよりも怖くて不快な目に会ってたでしょうね。  ――そこまでの事か、って? ……あんたね、ワタシ以外の女に間違ってもそんなこと言っちゃいけないよ? あの下衆ヤロウどもは、あの時ワタシを、ソウイウ衝動を晴らす道具としか見てなかった。  でもワタシは違う。その時ワタシはソウイウ事を望んでなかったし、そもそもワタシはソウイウ衝動を晴らす道具じゃないし、ソウイウ仕事を矜持をやってる訳でもない。ワタシのソレはもっと、その、なんていうのかな……。  ――ああ、もう! なんでこんなこと自分の半分も生きてない子に言わなきゃならないの! 今のはナシ! 忘れて! おちょくったら爆殺するからね!  ど、どこまで話したっけ? ……ああ、捕まったとこだったわね。  もう一度、ワタシは城に戻った。ベルトにまた別の「特別」を差してね。  さっきの爆発でほかの見張りも集まっているだろうから、ワタシは思い切って正面突破することにしたの。落とし穴があるから、見張りだって迂闊に近付かないだろうしね。  ワタシの読みは当たってたわ。――珍しいとか言わないでほしいんですけど? まあ、ワタシは落とし穴を飛び越えて、城の中を進んだ。どこに進めば魔王の部屋があるかは分かってたし、時折いる見張りを倒しながら先に進んで、2階への階段を見つけたわ。  階段を上るときって否応なく慎重になるの。幅も狭いし、天井も高くない。例えばここで挟み撃ちにされたら? 爆弾を投げて追い払うしかない。でもそうすればワタシもきっと死ぬ。  もしもさっきワタシを殺した液体生命を流されたら? 床に穴をあけてそこに溜まってもらおう。でもそうすればワタシが進めなくなる――とか、いろんなことを考えさせられるの。  だから階段を抜けた時ってすごく開放感がある。よかったあ、襲われなくて。とか思って溜め息をふうと吐いたところで、結果だけ言えば罠にかかったのよ。
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