……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 右から左に槍が飛んできて、それが心臓に刺さってワタシは死んだ。一瞬だったけど、激痛だったわよ。階段を抜けたところに罠を張るなんて、小賢しいわよね。――ワタシが迂闊? もうそういう言葉は受け付けておりません。  次に目覚めたときは本当に焦ってた。早くしないとエディフィスが爆破しちゃうかと思ってね。城の入り口まで全速力で走ったわ。エディフィスが城の周りに爆薬を置いてたしね。本当に焦った。  ……だけど焦って良いことなんかないわね。入口の落とし穴にまた落ちたの。沢山の棘に串刺しされるのって、いい気分じゃないわよ。――知ってる? いや、あなたには分からないわよ。少なくともワタシ程はね。  生き返ってから、今度は落ち着いていこうって心から思えた。串刺しにされるとね、人間ものすごく冷静になれるのよ。あんたも焦ったときは経験してみるといいかもよ?  で、入口の落とし穴を飛び越えて、見張りを倒し、階段は襲われないように素早く、出たところの罠に気を付けて。慎重になればなんてことないのよ。命を糧にして得た教訓だからね。……最初からそうしろって? あはは、ムリムリ。  2階からはほとんど罠は無いのを知ってたから、ここは急いで駆け抜けた。ここは牢屋だったの。1回目の挑戦でも1回も死なずに切り抜けて階段を上ったわ。  ――牢屋なら見張りはいなかったのかって? いないわよ。牢屋の中にいたのはみんな死人だったからね。階段まで一直線だったわよ。  その階段を上がってすぐに、インヴェンションの部屋がある。息を大きく吸い込んで、それよりもたくさんの空気をゆっくり吐き出して、ワタシはドアを開けたわ。 「魔王インヴェンション! 勇者リル・フェイトが再び討伐しに来たわよ! 覚悟なさい!」  その時インヴェンションは何か研究してるみたいだった。入口に背を見せて、赤と黒のマントみたいな服に身を包んでね。  それからゆっくりワタシの方を見て、それからギョッとして叫んだわ。
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