……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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「あなたは、死んだはずでは!?」  大体の魔王に言われたセリフなの、これ。だからワタシも言い返すのは慣れてたわ。 「あれぐらいの事で死んでたまるもんですか!」  それからワタシは持ってた爆弾を2,3個投げつけた。我ながら狙い通りにうまく飛んでいってインヴェンションに直撃して炸裂したわ。ワタシの爆弾、自爆用以外はそんなに火力ないのよ。もちろん必要最低限の殺傷力はあるけどね。  はっきり言って、ワタシ勝ったと思ったわ。だって最初に殺された時――液体に溶かされた時にね――爆弾を見せるだけでえらく焦ってたから。だからインヴェンションは、物理攻撃に弱いって思ってた。もちろん、勘違いだったんだけどね。  魔王はぴんぴんしてたわ。傷一つなく。 「……なぜ生きているのです?」  煙の中から出てきて、そう言われた時は冷や汗が止まらなかった。逃げようかとも思った。それともやけくそで自爆してやろうかとも。いろんな考えが頭の中をぐるぐる回って、その結果の行動はシンプルだった。 「……あんたこそ、死んだとばかり思ってたわよ」  こう言っただけ。だけど、この言葉が無かったらワタシはインヴェンションには勝てなかったでしょうね。  インヴェンションはワタシの問いかけに、律儀に答えてくれたわ。 「私のまとうローブが、私を守ってくれるのだよ」  頭からすっぽりとかぶった、悪意を隠す真っ黒なローブ。ただのオシャレじゃなかったのよ。 「このローブは我らがヘリーディル帝国に住む古代竜の鱗を極限まで薄くしたものです。この鱗をもって古代竜は、ヘリーディル最強の生物となったのですよ。炎も斬撃も、如何なる攻撃も通さない。火山の傍でも涼しく、真冬の雨の寒さも防ぐ。素晴らしいでしょう。  このローブを被るということは、神に勝利を約束されたも同然なのです。残念ながら世界に1つしか存在しませんがね」  つまりインヴェンションにワタシの爆弾は通じないの。こんな奴にケンカ売るんじゃなかったと思ったけど、もう1つ思ったことがあった。そんな頑丈なローブを着てるくせに、さっきはなんであんなに焦ったんだろう、って。
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