……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 で、後ろから押されたインヴェンションはエキメイに真っ逆さま! ――とはいかなかったのよね。  なにぶんワタシの力が弱かったから、突き落せなかった。インヴェンションはちょっとだけバランスを崩しただけで、ほとんど動かなかった。それからまたワタシの頭がイッパイイッパイになるんだけどね。 「貴様……!」  インヴェンションは呟いてからすごいスピードでワタシを向いて睨みつけたわ。その時、フードの部分が外れて顔が見えた。さっきまでの穏やかな雰囲気はどこかに行って怪物みたいな表情だった。目だけがいやに光ってて、不気味ったらないから思わず逃げ出しちゃったわ。  インヴェンションはもちろん追いかけてきた。この世に存在する悪口を片っ端から声に出して。魔動銃とやらも撃ってきてたわね。走ってたから全然当たらなかったけど。  ……でも怖かったわよ。誰かから悪意を向けられるのってすごく怖い。階段を下りて、そのまま走りながらワタシはもう勇者なんかやめてやる! って思った。だけど同時にもう1つ思うこともあった。  さっき2階は牢屋になってるって言ったでしょ? その中の死体を見て思ったの。  今ワタシを追いかけてる奴は、誰かが倒さないといけないんだろうなって。だってそうでしょ? どうしようもなく悪い奴がいて、そいつがいろんな方法で沢山の人を殺してる。エキメイをかけられたような死に方の人もいたし、魔動銃に撃たれたであろう人もいた。体が腐って虫が湧いている人もいた。あるいは虫の形をした兵器だったのかもしれない。その牢屋の中の人たちは、みんな酷い死に方をしてた。  そんな事をする奴を放っておいたらいけない。誰かが止めないといけないって。それで、それができるのはワタシだけなんだろうなって思ったわ。我ながらどうかしてた。あの時の恐怖は今でもしっかり再現できるのに、その気持ちは再現できないんだもの。どうしてかしらね。
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