……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 とにかく、何とかしなくちゃって思った。そうすれば不思議なのよね。インヴェンションを倒す手段だって思いついちゃって、そうしてたら1階への階段が見えてきて……また罠にかかっちゃったのよね。  どんな罠かって? 槍が飛んでくるやつよ。さっきは心臓にあたったけど、今度はお腹に当てた。 「――ハ! この間抜けめ!」  インヴェンションはすごく喜んだ声を出した。哀れだったわよ。槍が刺されば死ぬとばかり思ってるの。  ……ワタシみたいに何回も死んでるとね、人間の急所と、そうじゃない場所がなんとなく分かってくるの。槍が刺さったのは急所じゃない場所だった。狙ってそうしたんだけどね。  ……刺さった槍を引き抜くと血が出たわ。すごく痛くて意識が遠のいた。でも死ぬことを思ったらなんてことないの。ワタシはそのまま槍を両手で持ってインヴェンションの頭に突き刺した。フードも取れてたし、簡単だったわ。油断しきってるんだもの。  槍は眉間に深く刺さって、それでお終い。覚悟さえあれば子どもでもできるくらいに簡単だった。……簡単に死ぬのよね、人って。  そのときはもう、体中震えたわよ。それまでは爆弾でしか殺したことは無かったから感触が手に残るなんてことはなかったけど、槍はそういう訳にもいかない。刃が体に食い込んでいくあの感触は、忘れられないわね。  とにかく、インヴェンションは死んだ。声も出さずにね。ワタシが殺したの。間違いなく、殺したのはワタシだった。 「倒したんだ」  思わずそんな声まで漏れた。何の感傷も湧かなかったわね。だって次の言葉は 「賞金だ!」だったんだもの。――だって、生活かかってるのよ!? 独り立ちもしてない奴に浅ましいとか言われたくないんですけど!?  インヴェンションの死体を抱えて1階に降りようとしたら地鳴りがしたの。ずずん、ずず、ずずんって何回も音がして、城も揺れたわ。
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