……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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「エディフィス……!」  そう。エディフィスが城を破壊し始めたの。ワタシがまだ城の中にいるのに、城を爆破した。冷や汗がぶわーって噴き出したわ。早くしないとこの城が潰されちゃう。急いでインヴェンションを持ち上げようとしても、お腹の傷のせいで力が出ない。しょうがないから槍で首を切って持っていくことにしたわ。人の首を切ったのは、その時だけね。  あとは、ローブも拝借した。世界で1番頑丈な服があるのに、使わない手はないでしょ? ……ん? そのローブは今どこにあるかって? 話すと長くなるから、別の機会にね。  とにかくワタシはローブを羽織ってからインヴェンションの首だけを持って帰ろうとした。ワタシは痛みを堪えながら階段を下りて、入口まで這うようにして歩いて――罵ってもいいわよ――また落とし穴に落ちたの。完全に存在を忘れたわ。  今度は羽織ってたローブが裏目に出たわ。本当に頑丈なローブでね、落とし穴の中の針をまったく通さなかった。幸いなことに頭も無事だった。  不幸だったのはその直後に城が倒壊したこと。落とし穴の入り口――下から見れば出口にあたるところが塞がれちゃったの。少しだけ明かりが差してたから、完全に塞がれたわけじゃなかったのは不幸中の幸いね。  それからどうしたかって? 丸1日かけて這いあがろうとしたわ。倒壊した瓦礫の合間を縫って、ボロボロになりながらね。その過程で失血死しちゃったんだけど。  それで生き返ってからは役所に向かったわ。証人はいないけどインヴェンションのローブを証拠にすれば、私が倒したって信じてもらえると思ってた。でもそこで言われたことは事は残酷だったわ。 「魔王インヴェンションを倒したのは勇者エディフィスです。嘘を吐かれても困ります」  役所の職員が言ったのは、こういう事だった。役所だけじゃない。誰に聞いても同じことを言ったわ。 「勇者エディフィスは親切な女勇者に爆薬を分けてもらい、彼女が魔王を倒すことを祈り、その暁に城を破壊することにした。しかしその女勇者は魔王の卑劣な罠に倒れ、エディフィスは自分が魔王を倒すことを決意した。女勇者から分けてもらった爆薬を使い、彼は見事、魔王をその根城と共にうち滅ぼしたのだ」って。
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