……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 ――ただ、次の瞬間に、体中に激痛が走った。 「――! ――!」  ワタシの叫びはあぶくとなって液状生命の身体を通り抜けていくの。それと同時にワタシの身体の中にも緑色の液体が入ってきて喉も焼けるように痛いの。煮え立ったお湯を無理矢理飲まされてるような、そんな感じ。ワタシの身体を縛っていた鎖も泡を立てて溶けてたわ。 「――! ……! …………!」  ワタシがその時見たのは浮かんでいく自分の左腕とどっちかの目玉。目玉は石鹸みたいに泡を立ててどんどん小さくなって消えたわ。中から変な液体が出て、モヤみたいにすぐに消えた。  それから右手も浮かんできた。ワタシの身体は沈んでるのにね。それからあと真っ赤な血も雷雲みたいに浮かび上がって、それから歯が浮いてきて……  ――気持ち悪くなってきた? 根性ないね。聞きたいって言ったのはあんたでしょ? もう……。  とにかく、ワタシは死んだ。惨たらしくて残酷に、痛みに包まれながらね。  で、それからワタシは生き返った。五体満足、視界良好、食欲旺盛、機能万全。  むくり、と起き上って確認すると、木で作られた屋根と床。お気に入りのぬいぐるみ、身体の形にへこんでしまったベッド、桃色のタオルケット。間違いなく私の家。――そう、今ワタシ達が話している、ここよ。 「もー! なんなのあいつ。きもすぎ! もっと楽に殺してほしいんですけど!?」  そしてビューティーヴォイスで文句を一丁。それがワタシ、リル・フェイトの冒険の一幕なの。  生き返ってすることは一つ。ベルトに「特別」な爆弾を差して、袋の中に入るだけの爆弾を積める。それを使って魔王インヴェンションを退治しなければならない。そうしないと生きていけないからね。  インヴェンションの城の中とは違って、その時は良い天気だったわ。雲一つなくて風もさわやか。人が死ぬにはふさわしくないって思ったのをよく覚えてるわ。  ……ん? 死んだ人間がどうして生きてるかって? 生き返ったって言ったでしょ。ワタシは不死身なの。こないだ言ったでしょ?  ………初耳? あらごめん、もっと勿体つけて言えばよかったわね。  それじゃ、改めて。ワタシは、不死身なの。分かった?
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