……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 不思議と言えば「ビースト」とかいう魔王には生きたまま食べられたわ。蛇と狼と鷹とイソギンチャクを足して4で割ったような見た目で、もうキモチワルイキモチワルイ。胃袋の中でどうしようもなく死んでいくのは本当につらかったわ。  これは意識は鮮明なんだけど、お腹の中は空気が薄くてもう、すっ――ごく苦しいの! それにね? 消化液にかかるともう痛い痛い。それで自分の皮膚がずるっ、と剥けて骨と肉が見えた時は、ある種の――  え? 勘弁してくれ? あ、そう……。で、なにが不思議だったかって、生き返った時には最後に休んだ宿屋のベッドの上だったの。不思議でしょ? ワタシは死んだら、どうやら最後に休んだ場所に生き返るみたいなのよ。持ってた道具もそのままにね。  で、そんな感じで沢山死んだけど、魔王だって何人か倒したわ。賞金だって額だけ見れば一生遊んで暮らせるほどは稼いだ――ってのは言い過ぎね。それでも額だけ見たらすごい金額よ。全部貯金してれば石造りの大きな家が建てられるくらい。  でもそれだけ稼いでも、ワタシは勇者をやめずに魔王を倒し続けた。  ……どうして勇者をやめなかったのかって? そりゃあ、みんなワタシに期待してくれたからね。筋肉もなけりゃ身体も小さなこのワタシによ? 喧嘩をすればそこらの子供にだって負けそうなワタシに期待してくれてんだもん。この人たち相当追いつめられてるなあ、って思っちゃって、頑張るしかないとも思った。  あとは、お金がなかったからね。ワタシは死ぬたびに爆薬を新しく買わなきゃいけなかったから、それが生活費を圧迫したわ。旅立つ前は考えもしなかったけどね。――いちいち言わなくても、いい加減なのは知ってるんですけど?。  ……でも幸か不幸か、その時は魔王はたくさん送り込まれてきてた。1人やっつければ3人送り込まれる勢いだったわ。  ようするに軍隊で対処できる数じゃなかったの。だから国王は魔王に賞金を懸けて勇者や魔法使いを雇って討伐させた。今にして思えば、ヘリーディル帝国はそうやって国の財政も攻撃してたのかもね。
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