……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 で、わたしは生活するために魔王を沢山討伐しないと駄目だった。転職なんてできないしね。だって農民ってしんどそうだし、商人になるには――そう。わたしはいい加減だったから。魔王「インヴェンション」の城で殺されたのはそんなときだったわね。  いろんな死に方を経験したけど、餓死だけはワタシしたことが無いの。どれだけお金がなくても、とにかく食べ物は買って食べた。それが残飯でもね。  魔王インヴェンションと戦ってるときがワタシの貧困のピークだったと思う。あの時は本当にお金がなかった。でもインヴェンションに懸けられた賞金はすごかったわ。50回死んで、爆薬を全部買いなおしてもまだ余るくらいだった。それぐらい危険な奴だったってことなんだけど、どうせワタシは不死身だしと思って立ち向かったわ。……死ぬのは怖いのにね。自分でも見通し甘いなーって思うわよ。  空腹な身体に鞭打って、ワタシは爆薬売りのところに行って爆薬を買い占めたわ。貯金を全部使ってね。 「このお金でここにある爆薬、全部ください」  何でもいいからモノを買い占めるってのは、なかなかいい気分だったわ。もしも魔王討伐に失敗したらどうしようもなくなってたけど。  それから家に戻って沢山爆弾を作って、必要な分以外は金庫にしまっておいた。そうすれば、死んでもすぐに城に戻っていけるでしょ?  で、準備を終えてワタシは魔王城に向かった。歩いてすぐの場所よ。西の平原のド真ん中に城があったわ。今は牧場になってるけどね。  そんな近くに城を建ててたんだけど、インヴェンションは好戦的な奴じゃなかった。積極的に攻め込んでくるようなことは無かったけど、近くの村人や家畜を捕えてはアブナイ事をやってたみたい。ワタシもその犠牲者の1人という訳ね。  ……話を逸らすな? ほんっとにせっかちね。あなた。  城に着いたら1人の勇者がうろうろしてたわ。……なんで勇者って分かったか? 魔王城の周りをうろつく農民はいないでしょうよ。
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