……その魔王と戦った時、ワタシは23歳だった。

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 ワタシはやばいなーって思った。言うなれば商売敵だしね。だけどそいつは城に踏み込まずに外壁をじろじろ見てた。 「あなた勇者よね? 何してるの?」  思わずワタシは訊いて、そいつは答えたわ。 「城の外壁を見ているんです」 「それでどうするの?」 「壊せるところはないかなあ、と」  背の高い、礼儀正しい奴だった。歳は多分私と同じくらい。ひょろんとしてて、武術なんかは全くできなさそうな男。顔は……どんなだったかな。不細工じゃなかったわね。そいつは自分の事を勇者『エディフィス』と言ったかと思う。 「建築には多少の心得があります。なので建物のどこを壊せば倒壊させられるのか、とかも分かるんです」 「ふーん」  そんなのどーでもいいし、みたいな感じを出したけどね、内心すごく焦ってた。だって、 「って事はあなたは、この城を壊して魔王を倒すことも出来るんだ」  勇者が魔王の城を眺めてるってことは、そういうことに違いないと思うでしょ? もしそんなことされたらワタシの賞金はパア。明日からどうやって食べていくか考えなきゃいけない。服の中は冷や汗でびっちょりだったわ。  だけどエディフィスはすごい勢いで首を振った。 「いえいえいえいえいえ!」  そのまま首が千切れそうなくらいに。そうそう、首が千切れると言えばワタシも――もう、好きに話させてくれたっていいじゃない。  とにかくエディフィスは言ったわ。 「僕がやりたいのはこの建物の破壊です。魔王討伐はあなたのような方に譲ります。そのあとで僕はこの城を破壊します。ヘリーディル帝国の侵攻の拠点を、乱世の象徴を壊し、ここに新しく家を建てるのです。市民が住める、平和の象徴の家を」  この御時勢に変わった人だなーって思ったの、今でも覚えてる。ワタシなんか半分賞金欲しさに勇者やってるのに、エディフィスは本気で人助けがしたいみたいだった。まあ、ワタシの美貌の前にかっこつけたのかもしれないけどね。……なによ? 話、続けるわよ。
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