「切なさ」の味

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「スタート!」  再び合図と同時に走り出す。  ……重い。  不思議なくらい、足が重い。  まるで見えない手が、あたしの足に絡みついているような……。  なんで?  あたし、毎日欠かさず練習に出て、トレーニングも一切さぼらずにやってたのに。  空気に溶け込む事ができない。  幾ら足を前へと動かしても、今度はあたしはあたしのままだった。  見えない手は、あたしの足の甲から、くるぶし、ふくらはぎへとどんどん絡みつく。  何これ、何で……? 「汐崎っ!!」  先生の声が頭に響いた。  あたしがあんまり走るのが遅いから、きっと苛立ってるんだ。  どうしよう。  ちゃんと走らなきゃ……! 「大丈夫か、汐崎!?起きれるか?」  起きれる……?  はっとして目を開く。  あたしは、地面に倒れ込んでいた。
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