「切なさ」の味

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 立ち上がろうとして足を動かす。 「……っ!!」  足全体を強引に捻られるような感覚。  左足のつま先が、痙攣していた。 「ああ、こりゃ、攣ったな」  先生はあたしの側にしゃがみ込むと、あたしの左足を持った。  足をぴんと伸ばすように上へ持ち上げ、そのままつま先を膝の方に向けるようぐいぐいと力を込める。  しばらくすると、痙攣や引き攣った感覚はすっと引いていった。 「汐崎、ちゃんと準備運動したのか?もういいから、向こう行ってストレッチして来い」  先生はそう言い残すと、それ以上心配する事も無く、あたしの側を離れて行った。  驚いた。  まさか走っている最中に、足を攣るとは。  やっぱり、考え過ぎて集中できてないからなのかな……。  でも、走っている最中にも先輩の事が頭をよぎって……。  いけない、集中集中!  あたしはまた深呼吸をすると、えいっと気合を入れて、グラウンドの端へと向かった。
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