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繋いだ手から伝わる温もりは、相変わらずあたしの鼓動を速める。
少し垂れた目は楽しげと言うよりは気だるそうに見えるけど、それがあたしを見ると、優しく細められる事はもう知っている。
ただ、あたしを見るその瞳の向こうで何を考えているのか、あたしはまだ知らない。
湿気を帯びた風が目の上にかかる髪をふわりと揺らした。
あたしの頬がさっと熱くなる。
前を向いて歩いていた先輩は、視線に気付いたようで、ふいにあたしの方を見た。
「暑いね」
って、ちょっと笑いながら。
あたしは慌てて目線を逸らす。
「うん……」
俯いたまま返事をする。
きっと真っ赤になっているだろう顔を見られるのは、なんだか恥ずかしかったから。
あたしはしばらく時間を開けてからもう一度、気付かれないようにそっと先輩の横顔を見た。
あ、雲だ。
と、ふとあたしは思った。
青空にぽっかり浮かぶ、白い小さな雲。
先輩を見つめるあたしが見つけたのは、先輩の頭のずっと向こうに見える雲だった。
充紀先輩は、雲みたいな人だ。
捕まえたと思ったらするりと逃げて、見つけたと思ったら形を変える――。
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