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――「ね、ねえ!」
勇気を振り絞り、今度こそは聞こう。
そう思って、何度声を掛けただろう。
充紀先輩は振り返って後ろを歩くあたしを見る。
「ん?」
「あたしのこと……」
伸びきった前髪から覗く潤んだように揺れる瞳。
それがあたしを見つめる。
そうすると、あたしは居ても経ってもいられないような気持ちになる。
それをずっと見ていたいような、目を逸らしたいような、叫び出したいような、小さな子供みたいに甘えたいような……。
ちょっと厚めの唇の端がきゅっと上がったのに気付き、あたしは目を逸らす事を選んだ。
「何?」
先輩、あたしのこと、好き?
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