兄貴というな名の獣。

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これは小学生の頃、住んでいた街で出会ったお兄さんの話だ。僕の親は転校の多くなる仕事をしていたため、その街にも二年くらいしか住んでいなかったけれど、そのお兄さんの話が印象的のでいまさらながらに思い出す。 転校というのは何度やっても慣れない。住む場所、行く街、通う学校は同じようなものはあっても、微妙に違うものだ。そりゃ住んでる人間が違うんだから当然だった。 その小学校では、あんがいすんなり受け入れられて席が隣同士の男の子と仲良くなった。日焼けしてこざっぱりとした髪に笑うとポッコリとできるえくぼと気さくな性格で友達も多かった。子どものテリトリーの中でもっとも恐ろしいのは、孤立することだ。それがもっとも恐ろしい。大人と違って子どもは手加減というやつを知らない。何度も転校する上で僕が感じたことだったから、この学校では上手くやれそうだと思っていた。 隣同士の席ということもあって、彼とも仲良く、よく休み時間にも話すことも多くなって、ふと彼の頬に何かひっかかれたような傷跡がたくさんあることに気がついた。最初は動物でも飼っているのかなと思ったが、彼の性格なら動物にだって好かれるだろうというのは僕の偏見でしかないけれど、その傷跡がヒドく気になって、思い切って気いえみたこともあったが、彼は苦笑いするだけでなんでもないよと答えるだけ、ただ、その時だけ彼の表情に陰がさしたことだけは確かだった。 お兄さんと出会ったのは、学校の廊下でのことだった。最初見たときはずいぶんと暗い人だと思った猫背気味の身体にあまり洗っていないのかテカテカと脂っこい髪の毛にはふけらしきものが付着しており、俯き気味の表情は伺えない、僕が見ていることに気がつくとその人は、一瞬、驚いたような表情を見せるとそさくさと立ち去ってしまった。僕はその時、彼がその人の弟だとは微塵も思っていなかった。 僕も特に用事があるわけじゃなかったが、その人が振り返るとこちらをジッと見つめていそうで背筋がサーッと寒くなり僕はさっさと立ち去った。 そんなことがあって数日後のこだった。 街をよく知るためには自分で歩き回るのが一番だというのが僕の持論で、まぁ、暇でやることもなかった僕は散歩がてらに街を散策していたのだ。でも、知らない街を歩くと決まってやってしまうことがあるみ道に迷うことだ。これもこれで散策の醍醐味では、
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