兄貴というな名の獣。

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あるのだけれど、帰り道がわからなくなるということもある。まぁ、たいていの場合はあちこちを歩き回っていれば見慣れた道に出れるんだが、今日だけは違った。見慣れない街を歩き回りながら迷ってかもと思っていた矢先、薄暗い寺か、神社らしき場所に通りかかった時、その裏手から焦げ臭い香りが漂ってきた。まるで何かを焼くような臭いに顔をしかめるけれど、それが不審火だったと心配と、何が起こっているのだろうという子供ながらの好奇心が僕の気持ちを刺激した。そして、僕はその光景を見なければよかったと後悔した。 そこには数本の蝋燭が立てられ、一人の男の人が背中を見せながらしゃがんでいる。彼の足元には虫かごが置かれ、その中には数匹のカマキリがカゴから這い出そうとカサカサと動き回っていた。 「…………」 男の人は虫かごの中から虫の一匹を取り出すとそのまま火の灯った蝋燭に近づけていく。見ているだけでおぞましい行為だということがすぐにわかった。火はその近くに居れば身体が温まることができるでも、それに近寄れば熱さを感じるし、それに触れれば火傷してしまう。ましてや、小さな昆虫なんてひとたまりもないだろう。昆虫の悲鳴らしき、キイキイと喘ぐ声が聞こえてくるけれど、男の人はやめる様子はない。火はカマキリの背中、腹、脚を焼いていく。両手の鎌を動かして必死に抵抗しているけれど、なんの意味もない。カマキリの身体が半分ほど火に焼かれて、動きを止めた途端、ポイッとゴミでも捨てるようにカマキリを投げ捨てた。カマキリの身体はまだ、火がついていて焼け焦げた身体は真っ黒な炭のようになっていた。 「…………ぅ、え?」 そこでようやく声が出た。そのままズシャと地面にヘタり込む。殺した。虫を、小学校なんだから虫をいじるなんて珍しくもない。でも、蝋燭に灯した火で焼き殺してしまおうなんて考えもしなかった。それに念入りに焼いて、死んだ途端にポイッとゴミでも捨てる様子がなよりも恐ろしかった。 丸めた新聞紙で、ゴキブリをたたき殺すほうがよっぽどマシと思えるくらい陰惨な光景に僕は言葉がでなかった。 そして、その人が振り替える。その頭は脂っこくてふけだらけ、どんよりとした瞳は光がまったくなくてニヤニヤとした口元だけが薄気味悪く、そしてその人が廊下で出会ったあの人だとわかった時には僕は逃げ出していた。恐ろしくて、怖い。
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