少年の庭

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淀んだ世界の真ん中で、鈍く光る一粒の宝石。 少年は追い求める。闇の中にある希望。 無限に広がる広大な地獄。灼熱の炎に身を焦がす。 収縮を繰り返す星たちの砂浜。呑まれて消え往く。 断ち切る罪。罪人の首。少年は現実を見る。夢は儚い。 残響。魂に刻まれた産声。心の唄は鳴りやまぬ。 咎と律。陰と陽。訪れる終焉。黒く、もっと黒く。 七色の糸が紡がれた。編み込まれて網となる。 縋る。掴む。離さない。 少年は宙に浮いた。大気の蒼が目に映る。 美しい、眩い、この世の果て。 重い悩み、思い悩む。全て虚空に閉じ込めた。 翼を得た。自由を得た。飛び回れ、舞って喜べ。 解放。理、因果、運命。独立。 目を閉じた。目を見開いた。なにが見えた? 新たな発見。創造を始めよう。 未来に架ける挑戦状。日常と今を飛び越え過去と繋ぐ。 時空を駆けろ。少年は静寂に身を委ねた。 自然と一体に成る。銀河の一部に成る。 そうすることで眼(まなこ)に焼き付ける。 真理を。即ち、醜悪さを受け入れた。 見守る。少年は駕篭の外で。 閉じられたこの場所は、きっと幸福で満ちている。 瘴気は吐き出した。善意だけを抽出する。 甘酸っぱい果実を齧る。 穢れは祓われた。羽衣を纏う。天に翔け昇る。 大地を見下ろした。他人を見下した。 少年以外、等しく無力。 約束された仮初の幸。 楽観視して陽気に踊る。足を振り上げ手を振り下ろせ。 円の中の雑多な現世は、四苦八苦と極楽で成り立っていた。
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