失望する脇役と希望する主人公

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① 「僕は脇役だ」 少年はベッドの枕元で鐘を打ち鳴らす目覚まし時計を床に叩き落とし、のそりと起き上がった。 寝ぼけ眼で昨晩寝るまえに机の上に置いた眼鏡を探す。部屋の明かりをつけ忘れていた彼は、箪笥の角に小指をぶつけ悶絶する。 声にならない悲鳴を上げながら眼鏡を見つけると、部屋に明かりを点けて、先ほど叩き落とした目覚まし時計を拾った。 目覚まし時計は午前六時を指し示している。 少年は一伸びしてからベッドに腰を掛けてため息をつく。 「ほら見ろいつもの日常と変わらない普通の朝だ。僕が急にイケメンになったわけでもないし世界が僕を中心に回ることもない」 少年の名は向井田地道(むかいだじみち)。十六歳。身長百七十三センチ、体重六十キロ。耳にかかる程度の髪は日本人らしい黒。趣味は読書や音楽を聴くこと。名前の由来は何にでも真面目にコツコツやっていける人間になってほしいという両親の願い。 別に突出して頭がいいわけでも運動神経が良いわけでもない。ただひたすらに平均。 地道はまさしく絵にかいたような凡人である。 しかし彼はその事に対してなんら不満を抱いたことはない。思春期と呼ばれる時期でさえも密かにクラスの女の子のことを好きになった程度である。 だが、地道にはひとつだけ、ただひとつだけ頭を悩ませていることがあった。
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