失望する脇役と希望する主人公

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地道にはある特殊な性質があった。 それは癖というほど平凡なものではなく、才能というほど恵まれたものではない。 その性質とは絶対的主人公体質。 曲がり角では必ずといっていいほどにパンをくわえた美少女とぶつかり、街を歩けば謎の組織からこの世界を救わないかと勧誘を受ける。 地道が平凡な生活をおくりたいという若者としては夢のない夢を抱いているのはそんな体質だからこそである。 「自分を中心に世界が回るなんて考えられないよ……だって僕は」 学ランに着替えた地道は部屋に備え付けられた大きな姿鏡に映った自分を見てため息をつく。 成長を見越して買った大きめの学ラン。着ているというより着られているといった表現のほうがしっくりくるほどだ。 「なんで僕なんだろうなぁ……。もっと、それこそ天童くんみたいな人がこんな体質だったら良かったのに」 地道はとあるクラスメイトの名前を呟きながら、母親の作ってくれたトーストとスクランブルエッグを食べ終えると足早に家を出た。 今日こそは何も起こらないでくれと祈りながら。
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