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「なんだ…猫か。オマエの飼い主はどこに行ったんだい?」
撫でてやると、気持ち良さそうに喉を鳴らした。
猫とじゃれていると、突然後ろから声がした。
「それ、俺の猫…」
びっくりして振り返ると、私と同年代くらいの黒髪ストレートで瞳の色が吸い込まれそうなほど黒い綺麗な男の人が立っていた。
「ミーちゃん、おいで」
男の人がそう呼ぶと、猫が私の手から脱け出して、男の人のほうに行ってしまった。
「アンタ…こんなとこでなにしてんの?」
突然の質問に戸惑ったが、動物好きに悪い人はいないと思うし…。
「家出…してきて…」
「は?家出?」
男の人は、意味がわからない、みたいな顔で見てきた。
「…なんで家出したのかは知らないけど、早く帰ったほうがいい」
「なんで?」
「この公園、夜は不良の溜まり場になってるし」
こわっ…。でも、家には帰りたくない…。
「…なにしてんの?不良にやられたいわけ?」
「っ…!」
そんなの嫌だ。私は全力で首を振って否定した。
「なら、早く帰れよ」
「……帰りたくない」
帰りたくない。あんな家には…。
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