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猫姫と呼ばれた男の人は、私の腕を縛っていたロープを外そうとしてくれたが、
「いやっ!やだっ!」
体が勝手に、触れられることを拒否する。
「ご、ごめんなさい…」
「気にするな。さっきの不良どものせいで拒否反応が出てるだけだろ」
たぶん、違う。それも理由としてはあるかもしれない。
けど、私の体が拒否するのは父のせいだ。
この人は不良を殴った。
わかってる。この人は私を不良から助けてくれるために殴ったんだって。
頭では理解しているのに体が勝手に拒否してしまう。
怖い。また殴られるのでは、と。
「とりあえず、ロープを外すだけやらせてくれ。自分じゃどうにもできないだろ」
「すみません…ありがとうございます…」
体が震える。
大丈夫、ロープを外してくれるだけだから。大丈夫。そう自分に言い聞かせる。
「ん、外せたぞ」
「ありがとうございます…」
体の震えはまだおさまらない。
男の人はそんな私をじっと見て去っていった。
と思ったら缶ジュースを持って戻ってきた。
「やる。なにがいいかわかんなかったから、とりあえずココアにした」
「ありがとう…ございます…」
あったかい。
男の人は震えがおさまるまで、なにも聞かずにそばにいてくれた。
「さみぃな」
今は11月下旬。夜はかなり冷え込む。
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