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「あの………こんなふうに誘っておいてなんですが、藤浪さんはお付き合いされている男性はいらっしゃらないんですか?」
確か副社長が振られた理由は、“千咲さんが元婚約者と寄りを戻したから”だったはず。
それなのに俺とこんなふうに出歩いたりして………大丈夫なのだろうか?
そもそも合コンなんて………。
聞いた話だけだけど、5年越しの恋を実らせたという大恋愛なはずなのに。
藤浪さんは少し目を伏せて、小さく笑った。
「恥ずかしい話、つい最近振られたんです」
「え!?」
って、元婚約者とは別れたってことか!?
「振られて元気がないねって、野本さんのお姉さんに先日の合コンに誘われて。
こんな年増女がいて引きましたよね」
はははと乾いた笑いを零す。
「いえ!そんなことはないです!!
あの………立ち入った話をお聞きしますが、そのお相手の男性は、どんな方だったんですか?」
ちょっと必死な感じでそう聞く俺に、藤浪さんは少し戸惑いながら話してくれた。
「すっごく………素敵な人です」
好きな男性を語る、少し照れたような表情に、胸が軋む。
「私なんかが好きになるなんておこがましいくらいだったんですよ。
きっとヨシさんが見てもビックリするくらい素敵な男性ですよ。
黒髪も綺麗だし、黒い瞳も綺麗だし、背も高くて、脚も長くて………。
あとは、目元の泣きボクロが色っぽかったり、使ってる香水の匂いがすっごくいい匂いで。
それにすっごく優しくて………私なんかにも………優しくて」
「…………」
それって、かなり副社長に似ている気がするんだけど………。
「お土産に豚まんもらったり?」
俺のその台詞に、藤浪さんは目を見開いて俺を見た。
「な、な、何故それを!?」
心底ビックリする藤浪さん。
あぁ………ビンゴだ。
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