失恋、しました

2/11
15966人が本棚に入れています
本棚に追加
/502ページ
カーテンを閉め切った暗い部屋。 小さなシングルベッドから起き上がった。 「………はぁ………」 智志さんの事を思い出しては出てくる溜息は、一体何度目だろう。 気持ちはしおれ切ったままなのに………。 眠くもなるし、お腹もすく。 薄暗い部屋でぼんやりと虚空を見つめる。 あれから駅で暫くぼんやりしていた。 駅員さんに『これで終電ですよ』と声をかけられるまで………。 その後はトボトボとアパートに戻って来たんだけど。 帰り着くなり、泣いた。 声を上げて、泣いた。 何度も、何度も。 智志さんの事を思い出して。 その度に、また泣いて。 泣き疲れて眠った。 「………はぁ………」 もう何度目か分からない溜息を吐き、私はカーテンを開けた。 眩しい朝日に目を細める。 いつだって朝は来る。 失恋くらいでうじうじしてられない。 私は社会人。仕事行かなきゃ。 顔を洗って化粧して、ご飯を食べて服を着替えて出勤する。 いつも通りの生活が戻ってきただけ。 ただ、智志さんのいない、智志さんと知り合う前の生活に戻っただけ。 そう、あのツマラナイ日常に。 智志さんとサヨナラしてからまだ1日しか経っていないのに、ここ一カ月の思い出は夢のようだ。 キラキラしていた智志さんと過ごした日々。 会った回数は少なかったけど、それは私の人生で一番輝かしい思い出。 早く智志さんのこと、忘れなきゃ………。 気持ちを吹っ切るようにドアを開け───閉めた。
/502ページ

最初のコメントを投稿しよう!