突然の訪問者

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だいたい、子供を産むだけに結婚するって言うその発想に付いていけない。 私が頭を抱えていると、勉さんはフッと表情を緩めた。 「玲央との結婚、できれば前向きに考えて欲しいんだ」 「無理ですっ!!!  そんなこと言われても…………私、好きな人がいるんです。  あ、その人は玲央さんじゃないです」 すると、目をパチクリさせて驚いた顔になった。 「あの、玲央だよ?  顔も良くて、腕のいい医者で、もちろん高給取りで、将来は綾瀬総合病院の跡を継ぐ男だよ?  キミも生まれてくる子も将来安泰だよ?  玲央以上にいい条件の男いないと思うけど?」 「はぁ、興味ないですね。全く」 だいたい私はそんなハイスペックな男を選べるような身分の女ではない。 そう言った意味では………智志さんも雲の上レベルの男性だけど。 「私は愛のない高給取りより、たとえホームレスでも好きな人を選びます」 「………へぇ。面白いね、キミ」 「そんなに面白くはないと思いますが………」 勉さんはふふふと微笑むと、「あっ」と何か思い出したように声を出した。 「そうだ、キミの名前、まだ聞いてないや」 「あ、私、名乗ってませんでしたね」 なんてマヌケな二人だ。 顔を見合わせてクスリと笑い合った。 「私、藤浪千咲って、いいます」 「………ふじなみ………ちさき………?」 確認するように、ゆっくりと唇が動いた。 勉さんを見れば、鳩が豆鉄砲くらいましたって感じの顔してマジマジと私を見ていた。 そんなに驚く名前だろうか。 勉さんは2~3回パチクリと瞬きをした後、携帯電話を取り出した。 「連絡先聞いてもいい?」 「………なんでですか?」 「教えてくれなかったらまた突然部屋まで来ることになるけど………いいかな?」 「………」 笑顔で毒を吐くタイプだな。 まぁ、連絡先交換くらいいいか。 またいきなりうちに来られても困るし。 そう思い赤外線で番号交換をした。 通信後、私の情報が表示された画面を勉さんはまたマジマジと見つめている。 「藤浪、千咲さん、かぁ」 またそう呟いて、ニコニコの笑顔に戻った。
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