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次の日曜日。
撮りだめしていたドラマを見ながら、ボーっと過ごす。
これが本来の私の休日。
頭の隅で『智志さんと連絡を取りたい』とは思っていても、情けない私はそれを行動に移せない。
♪♪♪~ ♪♪♪~
あ、着信だ。
昨日、勉さんとアドレス交換したのを思いだした。
まさか………。
と、思いつつ携帯電話を取り出すと、画面を見た瞬間パーっと心の霧が晴れ渡った。
「───桜っ!!」
『お、あ、うん………ビックリしたぁ。
昨日、新婚旅行から帰って来たよー』
「お帰り!
さくらっ、さくらっ………!!!」
嬉し過ぎて、言葉にならない。
やっと桜が帰ってきた………。
『ちょっと、千咲、落ち着いて!
何か、あった?』
「うっ………うぅ………さくらぁ~」
『うんうん。
ゆっくり話してごらん?』
桜が優しく宥めるような声に、少しずつ私は話し始めた。
「結婚式が終わった後ね………」
『うん』
「智志さんと電車で帰ったの」
『うん』
「……もう、智志さんと会えなくなっちゃったぁ………」
『は??
ちょ、千咲!泣かないで………』
「だっ……だってぇ………ふぇ~ん………」
桜の声にホッとしたのか、私は暫く涙が止まらなかった。
『………大丈夫?』
涙が少し落ち着くと、気遣うような桜の声が聞こえてきた。
「う、うん………」
『明日は旅行後の初出勤でけっこう忙しいと思うんだ。
だから、火曜日、千咲のとこに泊りに行ってもいい?』
「うん!」
『そのとき詳しく聞かせて?』
「分かった。
帰って来て早々、ごめんね、桜」
『いいって。
それより、千咲が苦しい時に側にいてあげられなくて………ごめんね』
「ううん。こっちこそ。
いつも心配かけてごめんなさい」
『明日、お土産、会社に持っていくから』
「わぁ、楽しみ」
『うん、そんな感じで元気出して?』
「ありがとう………」
『じゃあ、また明日ね』
「うん。またね」
電話を切ってから出た溜息は………安堵の溜息。
桜に聞いてもらって、これからどうするか考えよう。
諦めるか。
思い続けるか。
どちらか選ばないと………。
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