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四 紅魔館
広大で、それでいて上品さを匂わせる高級感溢れる部屋がとある二人が佇むとある館の一室だった。
赤く装飾され、だけれども決して目障りにはならない程度に部屋は彩色されている。
この館にはこのような内装の部屋が大小差はあれど、数多くとても数えるのが馬鹿馬鹿しくなるぐらい多く存在する。
けれどもこの部屋のみは特別である。特別に絢爛なシャンデリア。特別に触感の良い絨毯。特別に豪華なカップ。
質が良いものばかりが集まるのも無理はない。
なにせこの館の主が部屋に居るのだから。
「……ふぅ」
従者であるメイドが淹れた紅茶を一杯飲み、そしてカップをソーサーに乗せた。
気品溢れる佇まいの少女の名はレミリア・スカーレット。
この紅魔館の主でもあり吸血鬼でもある。
「……」
その近くに一歩退いたところに立つのはレミリアに紅茶を淹れた従者兼メイド長。
忠実な瀟洒な女性の名は十六夜咲夜。
この紅魔館の唯一の人間でもある。
「……咲夜」
「何でしょうか、お嬢様」
レミリアが呼びかけると、咲夜は一瞬にして――正確には一瞬さえも過ぎてはいないのだが、刹那にしてレミリアの隣まで移動をした。
「この新聞……見て頂戴」
「……外来人、ですか?」
新聞の記事には外来人、零夜の事が多少フィクションはあれど、確かに記載されていた。
その記事をレミリアが片手で掴み、零夜の顔写真をゆっくりと見る。
「……お願いがあるの、咲夜」
「お嬢様の仰ることで御座いましたら」
完全に瀟洒のメイドは、目を閉じたまま佇んでいる。
レミリアはそんな姿を見、小さく頷く。
「この外来人を丁重に連れて来てくれる?」
「畏まりました」
直後、咲夜の姿は消えた。
残った吸血鬼は薄らと笑みを浮かべた。
「これも……『運命』なのかしらね」
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