二 能力、スペルカード、そして弾幕ごっこ 

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「さてさて、零夜も幻想郷の住民になったんだから、覚えておかなきゃならねーことがあるよな」 「覚えておかなきゃいけないこと?」  魔理沙が急にそんな事を言い出す。さっきの説明で俺に伝えていなかったことがまだあるようだ。  霊夢がめんどくさそうに魔理沙を見ている。 「魔理沙。何する気よ」 「まずは、能力じゃないか?」 「能力?」  魔理沙が頷く。その笑みに、何やら不穏なものが見え隠れしている。  あまりよろしくない気がしてきた。 「この幻想郷にはな、住む奴の殆どが能力を持っているんだ。私は……」  そして魔理沙がごそごそと服の中に手を突っ込み、何かを探し始めた。  すぐに見つかったようで、手を抜き出す。その手には八角形の物体があった。  そしてそれから小さく、炎が出始める。蝋燭に点いた火ぐらいな小さいものではあったが。 「これが私の道具、『八卦炉』。そして、私の能力は『主に魔法を扱う程度の能力』だぜ!」 「ほおー……」  おもしれー。 「魔法って、そんだけ?」 「いや。なんなら余裕でこの神社くらいの大きさのモノなら吹き飛ばせるぜ!」 「……洒落になんないからやめなさい」 「冗談に決まってるだろ? そんな本気にするなよ」  冗談としても霊夢からすれば笑えない冗句だったのだろう。ため息一つ吐いて、立ち上がった。 「おい霊夢。どこ行くんだ?」 「お茶淹れてくるのよ」 「そんなら私の分も」 「誰があんたのなんか」  そう吐き捨て、霊夢は廊下に出て消えてしまった。  そしてぎしぎしと廊下の軋む音が聞こえる。  この博麗神社、築何年になんのやら。
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