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でもまあ、一つだけそれが自分の能力だと思い当たる節があった。
「何か力、操れないの?」
「……多分、今は一つだけ」
「おお! じゃあ見せてくれよ」
俺は立ち上がり、裸足のまま境内に出る。
俺が手招きして、魔理沙も出て来た。
「で、どうするんだ」
「そこに立っていてくれ。魔理沙は何もしなくていい」
「分かったぜ」
霊夢と魔理沙が俺を見る。
俺は目を閉じ――開いて――!
「……は?」
次の瞬間。
俺は目の前に立っていたはずの魔理沙の後ろに回り込んでいた。
そして魔理沙の帽子を一回掴んで、持ち上げ、そして下ろす。
大した意味はなかったのだが、勢いよく魔理沙の体が回って俺と対面になる。
「……今、どうやって?」
幽霊でも見るような顔で魔理沙は俺を見る。
俺は少し笑って、手で足を叩いた。
「こいつの力を操ったんだ」
「でも……それにしちゃあ、速過ぎないか?」
「そうだな。速過ぎ」
力を操れたもの。
それは自分の体力で、今のは脚力を上げた。
しかし自分でも分からないことがある。
いくら速くても、それに感覚がついていかないと意味はない。あの速過ぎる速度を出したにも関わらず、自分の感覚がそれについていけたのが、異常だ。
身のこなしが自分のものではないようだった。
「……へぇー。こいつは面白い!」
魔理沙が急にそんな事を言う。
どこか興味を持っている様子だ。
「うんうん。弾幕も撃てるんだし、能力も使えてるし……」
「……」
嫌な予感がするのは気のせいか?
「ちょっと魔理沙? あんた……」
霊夢が魔理沙に予想内の答えを聞くような質問口調で訊く。
魔理沙は、満面の笑みを浮かべて、霊夢の方を向いた。
「どうかしたか、霊夢?」
「……いや、いいわ」
何故だか知らんが今、霊夢に見捨てられた気がした。
気のせいだと思いたい。
そう思う俺に魔理沙が顔を向けた。
相変わらずに笑ったまんまで。
「なぁ、零夜。幻想郷の最後のルールを教えてやるぜ」
……。
嫌です、と言える雰囲気ではない
しょうがなく、俺は頷いた。
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