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文が帰るとふと空を見上げた。
するともう赤く染まっていて、夕暮れということを教えてくれる。もう、そんな時間になっていたのか。
「ねえ。零夜これからどうするの?」
「どうするって言われてもな……」
まだ幻想郷に来て日の浅い、というか初日の俺の持ち物なんて霊夢が洗ってくれている俺の服と、この拳銃ぐらいだろう。
「なんなら、泊めてあげてもいいわよ。零夜一人ぐらいなら」
「本当に?」
「嘘吐く必要がどこにあるのよ」
と、霊夢は苦笑いを浮かべた。
俺は行くあてもないからその誘いを拒否する理由はない。
なので勿論、頷く。
「そう、じゃあ決まりね」
「助かるぜ、霊夢」
今晩野宿もありかな、と考えていた俺としてはとても大助かり。
「霊夢がここまで優しいなんて怪しいぜ……」
ボソッと魔理沙が呟くその声は俺の耳にも届いた。
しかし怪しかろうが頼るしかない。魔理沙の家も手ではあるが霊夢曰く荒れているらしいからあまり訪問はしたくないものだ。
「じゃあ、夕飯の準備もするから、零夜はお風呂にくべる薪を作ってね」
「ああ。分かった」
そう言い残すと霊夢はそそくさと博麗神社の中に入って行く。
俺は薪を割り始めようかと思い、近くに立て付けられた台を見つける。
「魔理沙も早く家に帰ったらどうだ?」
「ん、ああ。そうさせてもらうぜ」
ぼーっとしていた魔理沙だったが俺の一言で我に戻り、曖昧に返事をした。
「ああ、そうだ零夜」
「どうした?」
「もしも霊夢の神社が嫌になった霧雨邸にご招待するぜ」
「……サンキュー」
そんじゃあな、と言い残し魔理沙は箒に跨り飛び去った。
文にもあまり劣らぬ速度のような気もする速さ、だった。
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