託される

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大学卒業間近の春。 なんとか教員免許をとり、勤務先の高校が決定した私は、大学の寮を出るために荷造りをしていた。 そんなとき。 「よいしょ…っと、………ん?」 ケータイがメロディーとともに振動し始め、慌てて電話をとった。 もしもし、とこたえると、どうやら電話相手は、一人暮らしをすることに決めたマンションの管理人さんからだった。 建ってから、まだ5年も経っていないため小綺麗で、そのわりに安い値段に惹かれ、即入居を決めたのだけれど。 「………え、今、なんて?」 ホントにごめんなさいね、と申し訳なさそうに続けられる。 『私の管理ミスで、あなたの部屋が他の人とかぶってしまってねぇ… 若い頃はこんなことなかったのに、こうも年を取るとねぇ…』 ごめんなさい、と弱々しいおばあちゃん独特の少ししゃがれた声が届く。 「そんな…!大丈夫ですよっ! 他の部屋でも全然大丈夫です!」 そう、私、おばあちゃんっ子だったせいか、おじいちゃんおばあちゃんに弱いんです。 管理人さんの話によると、すでに誰かが入居決定している場所を、空いていると私に紹介してしまったらしい。 あの部屋、窓が広くて気に入ってたんだけどな… 『本当に申し訳ないんだけど…、もう部屋が空いてないのよ…』 え? 空いてない、って言った? 思わず荷造りしていた物を落としてしまった。 「…え、じゃあ、私、住めるところないんですか…?」 『ない、わけじゃぁ、ないんだけど……』 「どんな部屋でもいいですから!」 歯切れのない返事に、おばあちゃんだということも忘れて、食いぎみに言葉を返してしまう。 今から部屋を探したって、近いところはもううまっているだろう。 『部屋はもう空いてないんだけど…、一番上の階に私の孫が住んでるから…』 同居、というカタチでよければ…、と話は続いた。
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