託される

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そして引っ越し当日。 寮は一人部屋だったので、隣に住んでた子や仲が良かった子に挨拶をして、寮を出た。 大きい荷物は先に送ってあるので、私が今持っているのは、旅行鞄とショルダーバッグだけ。 寮から新居は三駅離れているので、歩いて最寄りの駅まで行って、そこから電車に乗る。 駅に向かう途中で振り返り、寮を見上げると、眩しい太陽に照らされて、少し古びた様子が見えた。 四年間過ごしたんだもん、やっぱりちょっと寂しいな。 …なんて思ったのは少しだけで。 小綺麗な新居を想像しながら、遠足前日の夜の小学生のようにはしゃいでいた。 ―――――――――― ―――――――― ―――…… 「おぉ…!」 着いた!ここでしばらくずっと過ごしていくんだよね…! プチ感動に浸りつつ、管理人室へ足を早める。 ここの珍しいところは、管理人さんが住み込んでいるわけではなく、朝の7時から夜の9時までしかいないということ。 それも安さの理由だとか、違うとか。 りん、とベルを鳴らして、管理人さんを呼び出す。 少しドキドキしながら、近くにあった広告を見ながら、待つ。 「…お待たせしました…! あ…、佐倉さんよねぇ…! この度はご迷惑をおかけして…」 「そんな…!もう良いですよ! 気にしないでください!」 申し訳なさそうに頭を下げる管理人さんに、慌てて駆け寄る。 「…そう?ありがとうね… じゃあ、早速、お部屋を紹介しましょうかね…!」 エレベーターに乗って、最上階の15階に着く。 こちらです、とドアが開かれて。 広くて長い、廊下が目に入った。 「う、わぁ…っ」 ひ、広い!綺麗!! 部屋がいっぱい!!! すごい、と呟きながら廊下を進んで行くと、管理人さんは嬉しそうに笑った。 「ふふ、気に入ってもらえたみたいでよかった…」 それを聞いて、ハッと我に返る。 やば、はしゃぎすぎた… 恥ずかしい…っ 熱くなった顔を慌てて下に向けた。
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