69人が本棚に入れています
本棚に追加
お互いにしばらく無言になること数分。
もしかしたら、数秒、だったかもしれないけど。
先に口を開いたのは、目の前にいる男の人だった。
「…………え、お前、ここに住む人?」
切れ長の鋭い目が私を捉えていて、私は少し竦み上がった。
「…え、と、はい……」
私の返事を聞くと、彼は呆れたように、心底嫌そうな顔で、はぁ、とため息をついた。
え、何、その態度。
てか、この人、誰?
いろいろ言いたいことがあったが、それは彼の呟きによって書き消されることになった。
―…女が同居人かよ、最悪…―
「え…?同居人…?」
同居人、て、どういうこと?
え、まさか、この人が……―?
疑問を心の内に留めることなく、そのまま口に出すと、彼は、はぁ、と深いため息をつきながらも答えてくれた。
「この部屋で同居するって話、聞いてねぇのか?」
「いえ、それは聞いてます、けど…」
「…なら、話は早いな。
俺が、ばーちゃん…、あの管理人の孫で、
……お前の同居人だ。」
「え、」
それって、つまり、そーゆーことですよね?
「え、えぇえぇ「遅くなってすみませんねぇ…
あら、リュウト帰ってたの?」……」
私の驚きに見事かぶせてきた管理人さん。
孫のリュウト?さんも、あぁ、と返事を返している。
いや、私の存在感が無いなんて、別に気にしてないよ?うん。
「…コイツが、本当に俺の同居人なのか?」
「えぇ、そうよ…!
とっても良い子だから、仲良くやって頂戴ね。」
ニコニコと笑うおばあちゃんに、さすがに文句が言えない様子。
「……あの…」
声をかけると、勢いよく二人とも振り返ってきた。
え、こわ。
どうしたの、とニコニコしている管理人さんに安心して、質問を告げる。
「…まさかとは思うんですけど、その、
リュウト?さんは、女性ですか…?」
彼は呆れた顔で、管理人さんはキョトンとした顔で、それぞれ私を見てきた。
最初のコメントを投稿しよう!