プロローグ

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あと一分。 …………さん、にぃ、いち。 学校独特のチャイムが鳴り響く。 まだ私は何も言っていないのに、何人かの生徒は、既に教科書を閉じ、筆記用具を筆箱に仕舞っていく。 その光景に若干呆れながらも、自分自身、昼休みを楽しみにしていたので、何も言えない。 「…じゃあ、今日はここまでね。」 そう、今は四時間目が終わったところ。 「明日は教科書の72ページからね。予習をしておくように。」 号令、と声をかけると、学級委員長が、起立、礼、と青年特有のよく通る声が響いた。 教室を出て、職員室に教材を戻して。 そして、今日もまた、彼のもとへ足を運ぶのだった。 コン、コン、コン。 いつものように、ドアをノックする。 彼の、やる気のない、だらしない声を聞いて、失礼します、と、部屋に足を踏み入れる。 この部屋の主は、すらりと長い足を組んだまま、椅子ごと振り返る。 そして、いつものように言うのだった。 「……お前か。 今日は早かったな。」 ふ、と妖艶に笑う。 そんな彼を無視して、勝手に冷蔵庫を開ける。 手が少し震えたのは、きっと気のせいだ。
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