託される

8/12
前へ
/47ページ
次へ
寝ぼけ眼で、じぃっと彼を見上げていると。 「…"イケメン"は有り難く受け取っておくから、とりあえず飯な。」 早くテーブルに座れ、と言われ、頭をぽんぽんされたので、こくっと頷いて、ブランケットを引きずりながら、椅子に座る。 ん…ブランケット…? もしかして、私が寝てたから掛けてくれたのかな… なんとなく、椅子の上で体育座りをして、ブランケットを頭からかぶってくるまる。 ……ってゆーか、さっき、リュウトさん、なんか言った。 なんて言ってたっけ…? 『"イケメン"は有り難く受け取っておくから、とりあえず飯な。』 やだ、リュウトさん、自分で"イケメン"とか言っちゃって…! くすっと笑いかけて、はた、と気付く。 いや、違う… 『有り難く受け取っておく』 ………これ、もしかして、私が口に出しちゃった…? さっき、リュウトさんのこと、イケメンって思ってたし…… うわ…、それだったら、めちゃくちゃ恥ずかしい…っ!! うぅ…、と唸りながら、膝に頭をぐりぐりと押しつけていると。 「…飯、できたぞ。」 すごくいいにおいのするお皿が、私の前にコトリ、と置かれた。 キッチンはカウンター式になっていて、テーブルがくっついている。 リュウトさんはカウンターから身を乗り出して、食器を並べてくれていた。 慌てて椅子から降りて、キッチンへ向かう。 「…ん?どうした、食べてていいぞ」 デザートなのか、器用にリンゴを皮を繋いだまま剥いている。 「いや、あの…っ、私、何も手伝ってないから…」 なんか手伝わせてください、と言うと、別にいいよ、という返事が返ってきた。 手伝うことはもうないのか、とあからさまにしょんぼりした私に気付いたのか、 「…じゃあ、飯食った後に皿洗うの手伝って」 それだけ言うと、またリンゴを剥き始めた。 私はまた椅子に座って、リュウトさんを待っていた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加