身に纏う

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「――…次に新任の教師の方々を紹介します」 どうぞ前へ、と声をかけられ、広い体育館のステージへと上がる。 下を向いていた顔を上げると、人、人、人。 う、わぁ…、たくさんの瞳がこっちに向いてる… 私が思わず背筋を、ぴ、と伸ばすと、両隣からも体を強ばらせる仕草が感じられた。 「…――先生。今年からの勤務となります。教えていただく教科は――…」 気づけば、もう私の隣の隣の先生が紹介されていた。 えっと、名前を呼ばれたら一歩前に出てお辞儀。名前を呼ばれたら一歩前に出てお辞儀。名前を呼ばれたら……。 「……です。よろしくお願いします。次に―…」 きた。やばい。きた。 念仏のように段取りを唱えていたら、どうやら順番が巡ってきていたらしい。 ドク、ドク、ドクと心臓が痛いほど、鳴っている。 名前を呼ばれたら一歩前に出てお辞儀。名前を呼ばれたら一歩前に出てお辞儀。名前を呼ばれたら一歩前に出てお辞儀……!! 「……―隣にいらっしゃるのは、佐倉美果先生です。」 「はい!」
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