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「…ぅぅ……」
青年は悪夢にうなされるような顔をしていたが表情が緩み、目を覚まし、体を起こす。
「ふぁあ~…」
ベッドから足を出しながら大きな欠伸をする。ぴょんとでた“アホ毛”
も欠伸と一緒に伸びる。
(なんだ…今の夢…)
涙目をこすりながら立って歩き出す。
見渡して見ると広い部屋に大きなベッド、大きなシャンデリアまで。
(今日は父上のバースデー…か…)
鏡の前に立つと金色の蛇口をひねり、顔を洗う。フワフワなタオルで顔を拭き、大きな両開きの窓開け、「ふぅ」と息を吐く。
外からは歓声が上がっていた。兵はラッパを吹き、色とりどりの紙吹雪が舞っていた。
歓声は明らかにこの建物へ向けられている。目を引いて見れば、そこは城だった。
そして今日は国王のバースデーである。
(…朝からよくやるね…今夜はうるさくて眠れないかも。)
起きたばかりなのに寝る時のことを考えると「ハァ~…」とため息が出た。
コンコン…
ドアが鳴る。
「王子様。」
「入っていいよ。」
窓辺からテーブルに向かいながら言う。
ガチャ…
「あら、王子様。今日はお目覚めが早いんですね。」
中に入ってきたのは赤髪が似合うポニーテールの可愛らしいメイドだった。
その手のトレイにはフレンチトーストと紅茶が乗っていた。
「リリィー、王子様の“様”はいらないよ。それに早く起きちゃダメなの?」
すねて頬を膨らませながらチェアに腰掛ける。
「いいえ、そんなことをありませんわ。早起きは三文の徳と言いますからね。」
少し微笑みながらそう言い、そっとテーブルにフレンチトーストと紅茶を置く。
「あっ!フレンチトースト!」
王子は目を輝かせる。
「今日は国王様のバースデーでございます。クロノ王子の好物、フルーツフレンチトーストをご用意致しました。」
「(モグモグ…)ふん。しっふぇふ。」
「うん。知ってる。」と言いたかったのかもしれないが、フレンチトーストが口いっぱいで上手く舌が回らなかった。
リリィーが「えっ!?」っと思い、フレンチトーストがあった皿を見る。そこにはもう既にフレンチトーストは消えていた。
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