§2 上階級と隔たりの檻

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翌日。私はベッドシーツとベッドパッドを斜めの洗濯槽に押し入れた。ドラム式用の液体洗剤を投入してボタンを押す。洗濯機のある脱衣所にある小さな磨り硝子の窓はスカイブルーを映していた。快晴。今日はドラム式洗濯機の乾燥機能を使わなくてもパッドも乾きそうだ。 石橋さんが来た翌日はいつもこうして洗濯する。シーツ、パッド、布団を掛けたときは布団カバー。暑いこの時期はタオルケットすらかぶらないから楽だ。石橋さんとのセックスの〆は自慰で、しかも白い液体が必ず何かを汚す。昨夜はシーツに垂れてそれはシーツの下のパッドまで浸出した。彼を見送ったあとにベッドスプリングからそれを剥ぎ、脱衣所に置いた。 少し長めのキャミソールのまま、脱衣所を出て部屋に戻る。カウンターで隔てられたキッチンに行く。やかんに水を汲み、コンロに掛ける。ガラスのティーポットにドライミントと紅茶の茶葉、グレープフルーツの皮を入れた。週に4度ほど働いているカフェのレシピを真似ている。微妙なブレンド具合は違うのか、どうしても同じ味にはならない。それでも味が軽く香りの爽やかなこの飲み物は毎朝の習慣になっていた。
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